都市交通プロジェクトに対しては、補助金や債券の発行などの多くの財政政策がなされている。しかし、それらのことが現在の世代と将来の世代での費用負担の格差にどのような影響を与えているかは、必ずしも明示的に考慮されていない。初期段階で大きな投資を必要とするので、後世代の便益のために現世代が過度に負担している可能性が高い。このため、本研究は、長期にわたる複数の各世代が、どのぐらいの便益を享受し、どのぐらいの費用を負担しているかを明らかにする手法開発を目的とする。ここでは、主に、財政学で提唱されている考え方で、年金や社会保障などの財政政策による各世代の一生の支払いや受け取りの実施総額を明示できる世代会計の手法を適用する。この手法を、都市交通基盤事業に適するように改良し、「都市交通プロジェクト型世代会計モデル」として構築した。このとき、都市交通プロジェクトの長期収支均衡条件を課し、各世代に便益および費用を配分するモデルとした。さらに、仮想的な都市に適用することによって、各世代の生涯便益と費用をまとめた世代勘定表の適用可能性を確認した。また、運賃、補助金、債券に関するいくつかの政策を変更し、これによって世代間のアンバランスがどのように変化するかをみた。この結果、補助率の上昇による運賃低下や債券償還期間の延長など、世代間のアンバランスを改善すると思われる政策であっても、他の財政条件との関連においては、必ずしも改善する方向には向かわないケースがあることを示した。従って、都市交通プロジェクトに政策を行う場合に、世代間のバランスを維持するためには、世代会計を用いた評価が不可欠であることを示した。 |