わが国の情サ企業の6割が首都圏、2割が大阪圏に事業所が立地しており、典型的都市型産業という現状である。本研究では、わが国における情サ産業の事業所立地と鉄道を代表とする交通機関の関係と、その地域性・将来の展望などについて、アンケート調査を通じて考察を行った。ソフトウェアなど情報を扱う産業であるため、情報ネットワークを利用すればどこでも業務を行えるかのようなイメージが先行しがちであるが、実際には人と人の対面による打ち合わせが必要であり、そのための移動手段として鉄道の利用度合いが高いことが調査結果からわかった。情報サービス企業は取引先へのアクセス重視の立場から、首都圏においては主要取引先が所在する都心から30分圏内で乗換1〜2回程度の駅周辺に事業所が位置する事が多く、地方においても新幹線の駅や空港の近くに立地し首都圏との関連を重視する傾向がある。多くの企業は、情報ネットワークが発展しても今後も取引先への移動のために交通機関利用が減ることはないと考えており、企業の鉄道の利用に大きな変動はないものと思われる。これらから、鉄道事業者は沿線に立地する情報関連産業の輸送需要を予測するとともに、列車運行、沿線(再)開発、新線の計画などにおいて考慮事項の1つとすることが考えられる。また、情報サービス産業が担うであろう情報ネットワークの発展は、新たな人的交流と移動を生み出す可能性もあり、この面からの鉄道への影響も見守っていく必要がある。 |