鉄道関連施設、特に遮音壁や軌道敷面などの極めてスペースの限られた空間緑化の可能性について検討した。土壌基盤と植生層を超薄層化することで狭い空間においても緑化が可能になると考え、@どのような草種が適するか、Aどの程度根圏の制約に適応できるか、基盤が薄層化することは同時に乾燥を伴うため、B基盤内への保水材混入の効果について実験的に究明し、緑化モデルを提案することを目的とした。まず適正種については、薄層化基盤での生育可能性が大きいセダム属を対象とし、4種(マルバマンネングサ、メキシコマンネングサ、タイトゴメ、ツルマンネングサ)について生育実験を行なった。いずれの種も根域に制限を受けない条件では最もシュート数の増加が大きく成長速度が速かった。一方土層厚1pの超薄層条件、約1.5センチメートルという極めて制限された根域であっても生育は可能であった。次に緑化状態を持続的に維持するという観点から優れた草種の選定を行なった。風圧等により茎が飛散しないことが大切であり、引き抜き抵抗力の大きい種が緑化用途上優れている。そこで周年にわたりセダム属4種の引き抜き抵抗力の計測比較を行なった結果、安定的に高い抵抗力を維持したのはメキシコマンネングサであった。最後に、薄層基盤等の根圏に制約を受ける植栽基盤条件では保水力が乏しく乾燥しやすい。そこで保水性の改善を意図して基盤内への保水材混入(高分子吸収剤を混合、または上層・中層・下層への層別配置)によるメキシコマンネングサの生育助長効果を検証した。その結果、保水材を混入することによってシュート数の増加傾向が高まった。ただし層別の集中配置では、開花期前にシュートが花茎に変化する割合が多く、群落の存続という観点からは評価できなかった。1000?当たり0.5g以下の少量を混入する方法での活用が適正であると考えられた。以上より、少量の保水材を混入した約1cm厚の超薄層基盤を用いてメキシコマンネングサを導入することにより、極めて狭隘なスペースにも効果的に緑被面を設けることが可能となる。また壁面などより乾燥しやすい条件では保水材の調整により生育を助長することが可能になる。 |