土師一流催馬楽神楽は、埼玉県鷲
宮町に鎮座する鷲宮神社に伝えられています。鷲宮の語源は土師部(土器などをつくる人)が移り住んだことから、土師の宮が鷲宮に転じたともいわれています。
鷲宮神社の神楽が文献に登場するのは鎌倉時代の「吾妻鏡」で、建長3(1251)年の記録が最初とされています。ただし、その神楽が今に伝わるものと同じであるかはわかっていません。現在の十二座から成る神楽が編成されたのは、宝永〜享保年間の頃で、今から280年から300年前のことであったと考えられています。
江戸後期の随筆家山崎美成による「海録」の中に、十二座に編成された催馬楽神楽の起源や江戸里神楽の源流とみなす有力な根拠がしるされています。このため、土師一流催馬楽神楽は関東神楽の源流と呼ばれています。
昭和51(1976)年、国の重要無形民俗文化財第1回指定の中に選ばれています。
催馬楽神楽の特色
最大の特徴は、平安時代に流行した催馬楽という歌が神楽の演目ごとに歌われることです。神楽は、出端(では)(序の舞)、中の舞掛り(まいがかり)(本舞)、引込み(ひっこみ)(終わりの舞)で構成され、催馬楽は出端と中の舞掛りの間で歌われます。また、舞の型に「四方固め」「三度」といった宗教味
の濃い所作が含まれ、格式ある典雅な舞となっています。
演目
第四座 降臨御先猿田彦鈿女之段 (こうりんみさきさるたひこうずめのまい)
猿田彦と鈿女命(うずめのみこと)を演じる二人舞。五穀豊穣・国家安穏を祈るとともに、二神を夫婦に捉え、安産祈願のために舞ったとも伝えられています。
第六座 八洲起源浮橋事之段 (やしまきげんうきはしわざのまい)
伊弉諾神(いざなぎのかみ)と伊弉冊神(いざなみのかみ)が天浮橋(あまのうきはし)に立ち、海中をかき回すと、八つの島が現れ大八洲(日本列島)が生まれたという神話を題材にしています。
第八座 祓除清浄杓(※)太麻之段 (ばつじょしょうじょうしゃくおおぬさのまい)
亡くなった伊弉冊神を追って、黄泉の国から戻った伊弉諾神が、不浄の身を日向国(ひゅうがのくに)の水辺で清めたという神話を題材にしています。巫女による二人舞。
端神楽( はかぐら )
各演目の間に舞われる、巫女一人の素面による舞。これにより、観客の目を楽しませながら、次の演目の準備をすることができます。
※てへんにつくり夕 |