 |
財団が助成する交通関係の調査及び研究の成果を論文要旨でご紹介しています。 |
|
|
|
|
助成番号 |
96_2_2_24 |
研究テーマ(和文)
|
マルク・スガンによるフランス初の鉄道建設過程とその歴史的評価に関する研究 |
研究テーマ(欧文)
|
Histoical Study on the First French Railways of Saint-Etienne & Lyon |
研究代表者
氏名 |
カタカナ |
コバヤシ イチロウ |
漢 字 |
小林 一郎 |
ローマ字 |
Kobayashi, Ichiro |
研究代表者年齢 |
44 |
研究期間 |
1996〜1998年 |
報告年度 |
1998年度 |
研究体制 |
共同研究 |
研究代表者所属機関・職名 |
熊本大学 工学部 環境システム工学科・教授 |
|
|
※所属、氏名、年齢は助成対象決定時のものです。 |
|
|
本研究はマルク・スガンによって計画・建設されたサン=テチエンヌ・リヨン鉄道の概要をスガンの日記・手紙あるいは当時発売された公文書等の一次資料のみに基づいて明らかにしたものである。欧米中心に傾きがちな鉄道史にあって、本鉄道の意義を明らかにした点は、我が国だけでなく、フランス国内においても高い評価を得た。 |
|
本研究の成果としてまとめられた3件の論文をまとめると以下の通りである。サン=テチエンヌ・リヨン鉄道は、全線蒸気機関車による牽引を予定して路線計画が行われた。このため、(1)山岳の鉄道で、3つのそれぞれの区間で等勾配に設計された。(2)平面線形の決定に際しては、大半径の路線選定が行われた。(3)橋梁、トンネル等の土木構造物の組織的利用がなされた。この点では、真に近代的な鉄道路線建設の最初のものと言っても過言ではない。さらには、上記のような先進的な構想の路線のため、当時の英国の蒸気機関車では馬力不足となり、新たな機関車開発の必要性が生じた。これを契機として、(4)多管式のボイラーの開発・特許取得が行われた。これは、すぐに英国のロケット号に採用され、世界の蒸気機関車の標準となっていく。また、鉄道経営の面では、(5)当時の運河交通や馬車輸送のコストに比べ、輸送費を半分以下にすることに成功した。これより、(6)1833-48年の間は石炭輸送量は世界一であった。さらに、この鉄道が、(7)中規模の山沿いの鉄道のスタンダードとなった。(8)英国以外で初めて鉄道網(アンドレジュー鉄道・ロアーヌ鉄道との結合)の構築がなされたことも見逃さない。 |
|
さらに、この様な鉄道経営の成功は、(9)フランスの工業化と鉄道の集中的利用の先駆けとなり、フランスにおける真の意味での工業社会への扉を開いたと言える。なお、本鉄道における歴史は、先進国英国からの高度技術の「技術移転→技術応用→技術開発」の典型的な事例であると言える。 |