日本の歴史の中で、多くの一般民衆が寺社参詣や行楽のための旅に出るようになったのは江戸時代になってからで、徒歩による旅が中心でした。
江戸時代の旅を代表するものが伊勢参宮でした。東海道には多くの名所や名物がありました。徒歩の旅では、目の前に広がる風景をゆっくりと眺めることができ、各地の生活の様子や風習を見聞することができました。
近代になると、1872(明治5)年新橋・横浜間に日本初の鉄道が開業。その後、日本各地に鉄道が開業するも、伊勢参宮者たちは、直ちに江戸時代以来の旅を捨て去ることはできなかったようで、途中下車を繰り返し、沿線の主要な寺社などを参拝見物していました。しかしながら、1889(明治22)年に東海道線が全線開通すると本格的な鉄道旅行の時代が到来し、時代とともに、旅のかたちも変わってきました。
今回の企画展では、「江戸時代の徒歩の旅」と「近代の鉄道旅行」に焦点をあて、旅の道具、道中記などを展示し、江戸時代と近代の旅模様を比較しながらご紹介します。