開催概要

アートと出会う場所 - 山本豊津

平成も20年経ち、昭和の景が残る町の風情も開発によって消え去ろうとしています。昭和の景とは、日本が100年の時を費やして近代化した町の歴史の姿です。このたび「駅2008年−鶴見線に降りたアートたち」展の舞台となる鶴見線の各駅は、この風情が色濃く残る数少ない場所です。そこにあえて昭和のイメージとはおよそかけ離れた世代のアーティスト5人に作品の制作を依頼しました。近代以降、アートは根なし草のようになりました。人々がふるさとを失ったように、アートも依って立つところを失ったのです。しかし、それでもなおアートが現出する時と場所は、そのアートと密接な関係を結んでいます。アトリエをどこに構えるか。それとも一ヶ所にとどまらないのか。この企画は、あらかじめ決められた場所に、各々のアーティストが足を運び制作することを条件としています。当然作品は、立つ場所の影響を受けて制作されることになります。越後妻有や直島など、定められた場所に作品をインスタレーションするプロジェクトが好評なのは、アートにも何か依って立つ場所むしろ環境と言い直してもよい空間との関係が求められているからだと思います。近代のアートシーンは、作品が商品として流通することを前提として展開されてきました。ビエンナーレなどのイベントやアートフェアーなど、アートのインフラが世界に拡がり、21世紀に入るとその商品としての性格がますますクローズアップされています。しかし、一方では、生身の肉体をもつアーティストが個性の異なる現場にアートを現出させ、目撃した人に一回だけのふるさとを体験させる出来事としてのアートが再認識されています。アートを所有することからアートを体験したいという、コミュニケーション手段としてのアートの役割が大切になってきていると実感します。

展覧会名
「駅 2008―鶴見線に降りたアートたち」展
会期
2008年10月25日(土)- 12月7日(日)
会場
JR東日本鶴見線の5駅
(鶴見駅、国道駅、浅野駅、海芝浦駅、扇町駅)
入場料
改札内の展示をご覧になる際は目的地までの切符をお求め下さい。
主催
東京ステーションギャラリー(財団法人東日本鉄道文化財団)
「駅 2008―鶴見線」展実行委員会
監修
林武史(彫刻家・東京藝術大学准教授)
山本豊津(東京画廊+BTAP代表)
後援
東日本旅客鉄道株式会社
協力
株式会社東芝 京浜事業所/東京画廊+BTAP
助成
財団法人横浜市芸術文化振興財団