仙台
富沢磨崖仏覆屋修繕事業

宮城県 柴田町

「富沢磨崖仏群」は、宮城県槻木駅に近い富沢字岩崎に位置し、高さ2.4mの阿弥陀如来像を中心として、周辺の凝灰岩に刻まれた石仏・磨崖板碑(梵字を刻んだ供養碑)の一群である。この阿弥陀如来像は、銘文から鎌倉時代末期の嘉元4(1306)年に時宗の恵一坊なる尼僧及びその弟藤五郎が亡き父の供養のため造ったものと考えられ、鎌倉期の大型磨崖仏としては東北地方有数である。こうした貴重性から、昭和46(1971)年に宮城県指定史跡となった。現在も、地域の檀那寺である曹洞宗青松山常光寺(同町入間田地区の曹洞宗円龍寺の末寺)の大仏として地域に親しまれ、毎年4月には地域の大仏祭が開かれるなど、長年にわたり大切に扱われてきた。

このほかに、永仁2(1294)年の銘がある虚空蔵菩薩4像、六地蔵や子どもの夜泣きに霊験ある「眠り観音」として親しまれてきた如意輪観音像などが残されている。いずれも、鎌倉期東北地方の仏教信仰をよく示す貴重な史跡である。

阿弥陀如来像は、史跡の指定以前より覆屋によって囲われており、これによって風雨への暴露を防ぎ、保存状態よく継承されてきたが、令和元(2019)年台風19号の被災によって屋根部分を中心に大きく破損し、磨崖仏に土砂を含む雨水が直接流入する状態となった。現在は屋根上にブルーシートによる養生をすることで、一時的に雨水流入を防いでいる。

今回の支援により、既存の覆屋構造を利用して修繕することで、雨水による磨崖仏の損耗を防ぎ、後世に磨崖仏の姿を残し伝え、地域の貴重な文化資源を継承していく。

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